リーガルリリーBa.海の部屋
「スモークと煙草のにおい」
みんな今週もお疲れさま。
こちらはいま名古屋に向かう新幹線の中で、今まさにライブハウスツアーがはじまろうとしているところです。
新幹線っていいよね。
私はとにかく高速移動が好きで(?)車も電車も飛行機も新幹線も大好き。
休日にひとり、当てもなく電車乗ったり降りたりしてます。もはや電車には乗りたいけど、どこに行くのか決めるのがめんどくさいという気持ちまである。なのでみんなに会うために移動できるツアーは大好き。
で、どうしてそんなに移動が好きかって、もちろん文明の発達を肌で感じて胸がときめくというのもあるんだけど、流れる景色を見ながら音楽を聴いてると、不思議といつもより言葉が入ってくるんだよね。
いつも移動の時は歌詞が好きな邦楽をたくさん入れたプレイリストと、DJみたいにBPMとかビートでグラデーションをつけた洋楽プレイリストを作ってよく聴いてる。
あと、私の趣味って考えごとじゃないですか(?)
それも、とても捗りますね。
という感じで、今、流れる景色を見ながら考えごとをしています。
最近はeastern youthとさよならポエジーと一緒にライブハウスで演奏したり、このライブハウスツアーもあるからライブハウスのことを色々と考えていたんだけど。
やっぱり異質で、特別な場所だなって。
初めてライブハウスに行ったのは、高校生の時に先輩の出るライブだったかな?
当時のフロアはスモークとタバコの混ざったにおいが充満してて、自分の生活と地続きの場所ではない感じがなんか好きだった。
もちろん家に帰ったら制服とかバッグに消臭剤を振りかけるんだけど、
次の日学校でカバンを開くと、昨日のにおいがまだ残ってて、学校に持ってきちゃいけないものを持ってきているみたいでドキドキしたり。
なんて言うか、みんなに秘密のわたしがちゃんといるんだって安心する感じ。
お母さんには内緒で、おばあちゃんに電話してもらって学校をサボった日。
夜にどうしても行きたいライブがあってライブハウスに行ったら学校の友達と会っちゃった。
好きなバンドの新曲を聴きに行ったのに、そんな日に限って貧血で倒れて、ロビーで音漏れを聴くことになった私は、目がぐるぐる回りながら「あぁきっと学校サボったからだ〜」って思ってた。
それと同時に、もしも学校サボってなかったらこんなの受け入れられない!サボっててよかった!帳尻が合った!とも思った。
このくらいの悪いことは、たまにはしてもいいんですよ。
だって毎日、頑張って、頑張って、頑張って生活してるのに、突然嫌なことが襲ってきたら耐えられないもん。あ、あの時ちょっとサボっちゃったからだって心当たりがあれば、意外と「まあしょうがないか」って思えたりするし。
そんな風にライブハウスでの思い出は、絶対にこの日を忘れたくない!っていうような素敵な日より、良くも悪くも少しだけドラマチックな日の方がよく覚えてるみたい。
(きっと素敵な日が多すぎて、どんどん上書きされているからだとは思うんだけど)
あと覚えてるのは、学生時代に友達に誘われて行ったライブ。
街の小さなライブハウスと、東京ドームであったガンズのライブしか行ったことなかった私は、いわゆるワンマンライブ!みたいなものをあまり知らなくて。ほとんど初めてフロア全体が同じ熱量、同じ熱気のあるライブに行った。
そこで、強烈な一体感の中にいると、まばたきをする頻度で、同じくらい強烈な孤独感に襲われるってことを初めて知ったの。
素敵なアーティストだからさ、「ここはお前らの居場所だ」って言うんだけど、わたしは"お前"でも、なんなら"ら"ですらない気がして。
夢中になれない自分がおかしいみたいな気持ちでトイレに逃げて、個室で泣きそうになりながらサカナクション聴いて踊ったりしてた。
孤独感とか疎外感とかが急に襲ってきた時は、いっそ映画の主人公になった気持ちでしっかりエンタメにするのがいいですね。
私が好きな映画では、トイレに逃げ込んだあと、ひとりでイヤホンから流れる爆音で踊るのが正解なので、全然予定通りです。
クラブチッタだったからさ、空のトイレの個室が大量に並ぶ感じは、リミナルスペースすぎてたね。
それでも帰りには「楽しかった、また誘ってね」とか言っちゃったりして。
と、まあそんなドラマが私たちのライブでもひっそりと起きていて、誰かが何十年後かにたった10秒の出来事を思い出してくれたら、それでいいじゃないかと思うわけです。
私はただそこにいて、音楽を鳴らして、人が集まれる口実をつくっている。
ライブハウスでライブをするもっとかっこいい大義があるような気もするけど、今の私はこれが1番好きかな。偶然同じ時代に生まれた人が同じ場所の同じ時間を目指して、同じ曲を聴きに来るってなんかロマンチックだし。
また考えが変わったら伝えるね。
だから正直ライブハウスがずっと居心地のいい場所だったかと言われたら、私はそうじゃなかったです。今の方が好きだし。
けど、たくさん感情を動かされる場所であるのは確かで、何が欲しいのかはわからないけど、ひとりで何度も重い扉を開けてる。
人の隙間から漏れる眩しい照明のことも、キックのローが響くトイレも、ハウリングに被った歌詞も。どれも記憶を引っ張り出す脳みそより先に心が思い出す、「この感じ知ってる!」っていつもよりドキドキしたりして。
そんなの不思議でしょうがない。
名古屋につきそうなので考えごと終了です。
ライブハウスツアーたのしみ。
ではまたこんど。
追記:今機材車で京都へ移動しています。
名古屋公演、やっぱりライブハウスは、今の方がずっと好きだなって思いました。(ピース)
海 (2025.03.21 更新)
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