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「第十一回:金麦、時々黒ラベル」

海の部屋_第十一回_掲載写真

小学生の頃担任の先生と毎日交換日記をしていた。
そこで「私の家はおじいちゃんが呑んべぇだから夜ご飯のおかずは酒の肴ばっかりです。お母さんによると大人になったら喉がカパっとひらいてビールが美味しく感じるみたいですが、わたしはまだひらいてません。」なんて話をしたことがある。
先生は「うらやましいな、先生は喉がひらいているのでビールがおいしいです。」と返事をしてくれたけど、気がつけばあれから10年が経ちわたしの喉もいつの間にかカパっとひらいていた。


そんなことをゆくりなく思いながら帰り道にあるスーパーに立ち寄った。
陳列された缶をみて散々迷った挙句、今日もまた金麦を手に取ってしまう。頑張った日には特別にサッポロ黒ラベルを選ぶのだが、ここ最近はめっきり。
そんなときでも金麦は「今日頑張ったあなたも、頑張れなかったあなたも、とりあえずおつかれ!」と寄り添ってくれる優しいやつなのだ。



4月下旬からワンマンツアーが始まった。
前回のツアーが中止になったから約2年ぶりになるらしい。
そして移動日、広島、福岡と久々にハードな3日間のスケジュールを終え、福岡のホテルにてついにサッポロ黒ラベルをお迎えした。

とは言いつつさほど呑んべぇでもないので正直味の違いはほぼ分からない。ただちょっと味濃いかも?と思う程度だ。
けれどやっぱり特別頑張った日はサッポロ黒ラベルがいい。


というのも、子供の頃は頑張った証に先生や母にたくさん花まるをつけてもらっていたが、いつの間にかそれもなくなってしまったから。
わたしたちは自分で自分に花まるをつけてあげなければいけないほど大人になってしまったのだ。
自分自身の頑張りはちゃんと自分で評価してあげたい、だからこの一番星はわたしがわたしにあげる大切な花まる。
そんなお酒との付き合いも悪くないでしょ?


久々のワンマンライブの後、余韻と一緒に流し込むビールはいつもより少し美味しかった。
ような気がした。



海 (2021.04.30更新)



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