Akari Dritschler
[アカリ ドリチュラー](Vo)
1stアルバム『Capture it』が完成しての感想はいかがですか?
- 凄く良いアルバムになったと思ってます。「19」のリリックビデオも先行で公開したんですけど、みんなの反応がすごく良くて嬉しいし。中3の弟から突然「新曲いいね」ってLINEが来て、「友達も気に入ってる」って言ってくれてて。中学生の弟にウケたってことは、めっちゃ良いってことじゃない?と思ったら、すごく自信が付きました(笑)。
リード曲の「Party All Night」はキャッチーで、一発で入ってくる感あるけど、「19」は聴くほどに好きになる曲ですよね。
- ホントですか? 嬉しいです。私はアルバムだと「19」とか「Caught Up in Time」が推し曲で。「Party All Night」がリード曲っていうのは最初は、納得いかなかったんです。この曲は「HAPPY」をテーマに作ったんですけど、ライブでやり始めたら初めて聴くお客さんが一緒にノってくれて、私も歌ってて楽しくて。「あ、この曲いいかも」と思うようになりました。
そうなんだ。「アルバムで個人的に一番想い入れの強い曲は?」ってみんなに聞いてるんですが。男子チームは3人とも「Party All Night」と言ってました。
- マジですか? 男たちは曲を作る段階からの想い入れがあると思うけど、私は歌詞による想い入れが大きいからなぁ。「Caught Up in Time」はめちゃ深いところから引っ張ってきた感情だったし、「19」は今思ってることをストレートに書いた曲で。私が一曲挙げるならやっぱり「Caught Up in Time」かな? メロディも歌詞もすごく気に入ってて、想い入れも強いし、深いです。
「Caught Up in Time」はカントリー調で聴き心地良いけど、歌詞を読むとかなり深いところでの恋愛観を歌ってますよね。
- そうですね。恋愛的な目線で書いた歌詞ではあるんですけど、私自身がこれまで男女ですれ違うことが多くて。そんな自分の経験を踏まえて、掘り下げて書くことが出来たんです。
バンドとしても10代の集大成と言えるアルバムですが、個人としても今だから書ける想いを書き留めることが出来ました?
- はい。10代最後に作ったアルバムなので、良い節目でもあるし。10代の間で私が感じてたことをちゃんと言葉とメロディで残せたから、すごく良かったと思います。
「Lonely」で、「私たちは人生が何かを理解するには若すぎたのかな」と歌っていたり、「Caught Up in Time」で「まだ人生のこと何も知らないでしょ」と歌っていたり。自分が何も知らないことも分かった上で、言葉にしている歌詞がリアルです。
- 実際に何も知らないし、下手に分かっちゃっても嫌だなと思うし。19歳って「分かんないから」って言っちゃっていい年なのかも。成人手前でギリギリだとは思うんですけど、「分かんないから、教えて」って言ってもいい時期だと思うから、何でも言えるし。今のうちに吐き出しておかないと、言いたいことも言えなくなっちゃうと思って。
「19」の歌詞を借りるなら、<we're living 19>。「だって私たち19歳だから」ですよね(笑)。
- そう、やりたいと思えば何でも出来るんです。ありがたいことに、周りに「大人になれ」って言う人もあまりいないんで、「子供でいさせてくれてるうちに、子供っぽいこと言っちゃえ!」と思って(笑)。この曲は歌詞が先に出来て、その時ニューオリンズにいた男子チームにメロディを付けて、LINEで送って作っていったんですけど。
歌詞先行ということは書きたいことがあって、その思いが先に出てるってことですからね。
- そうですね。いつもは曲を先に作って、それを聴きながら歌詞を付ける作り方がほとんどなんですけど、「19」はFAITHでやりたかったことを自分からリクエストして表せた曲だから、お気に入りなのかもしれない。
FAITHでオリジナル曲を作り続けてきてますが、今は書きたいって気持ちが強い時期だったりする?
- 日によります。なにか強く心が動いた時は、携帯のメモにずっと書いてたりするし。落ち込んでるとか、相当嬉しいとか、何かが起こってるとか。言葉にしたい感情を持ってる時しか、歌詞が書けないんです。ただ、ホントに落ちちゃうと、歌詞が全部愚痴になっちゃって、人に聴かせるものじゃなくなっちゃいます(笑)。でも、いまは前と比べてすごい書いてる時期だと思います。
今なんて、バンド周辺や生活とか、環境も大きく変わってきて。感情も大きく動く時期だったりするでしょう?
- 視界はすごく広がった感じはします。思い立って11月に一人で台湾旅行に行ったんですけど。新しい人や景色と出会って、一人で旅をしてきたら、思考の仕方もちょっと変わってきたし。嫌なことも言われないし、ただ楽しく過ごしてればいいって時間だったし、一人でもなんとかやれたから「どうにかなるわ!」って気持ちになれたし。
嫌なことを言われたら言われたで、「Our State of Mind」みたいな歌詞も書けるんだけどね(笑)。
- そうなんですけど、いつまでも卑屈な歌詞を書いてちゃダメだと思って。「歌詞で怒ってばっかりだね」って言われて、そんなことないんだけどなぁと思うんですけど(笑)。普段から溜めこんでると、歌詞に出ちゃうのかもしれないですね。
『Capture it』はバンドの色だけじゃなくて、歌や歌詞の感情・表情の豊かさから、Akariさんのキャラや人となりも見える作品にもなってると思います。そこで歌詞が英詞ってところもすごく良くて。日本語詞だと伝わり過ぎちゃうところがあると思うし、歌や曲から自分なりの想像をした後で、訳詞を読んでより深いところで曲を理解するって聴き方が出来ると思うんです。
- 歌詞は『Yellow Road』のEPからCDのブックレットに和訳を載せるようになったんですけど。和訳を載せることで、同世代の子たちから共感してもらえるってことに気づけたんです。前までは和訳どころか、メンバーに歌詞の意味を伝えるのも恥ずかしかったんですけど。「和訳を載せることを恥ずかしいと思うな」って言われて、「確かに自分の歌詞に自信を持てなきゃダメだな」と思うようになって。今は歌詞のことを聞かれても、気軽に答えられるようになったし。Twitterとかで「この曲、今の私すぎて共感した」と言われると、みんなそうなんだと思って嬉しいんです。
「Lonely」でも「孤独なのは私だけなのかな?」と歌うことで、「私だけじゃないんだ」と救われる人がたくさんいると思います。
- そうなんですよね。共感してもらえることで、私もその人に共感出来るから、聴いてくれる人にも親近感が湧いて嬉しくなっちゃうし。私が自分のことを歌うことで、同世代のお客さんがもっと増えて欲しいなと思ってます。
5年前、FAITHを結成した時にはプロになって、自分の歌や言葉を全国の人に聴いてもらうなんて未来、想像してました?
- 全く想像してなかったです!歌うのは好きだし、先輩のバンドを見に行くのも好きで、高校3年間の趣味くらいの気持ちでバンドを始めて。それからライブハウスに通っていたら、いつの間にか東京に出ていて、ずっとバンドやってるみたいな感じで。まさか仕事に出来るなんて思わなかったです。
バンドやる前は将来の夢ってあったんですか?
- アメリカで芸能関係の仕事がしたいなと漠然と思ってて、「高校卒業したらアメリカ行こう」くらいに軽く考えてたんですけど、行かなくて正解でした。一人でアメリカに行ったところで、やりたいこともハッキリしてなかったし、今のような状況にはならなかったと思うし。
順番は違うけど、FAITHで海外のフェスとかに出られるようになって、「気づいたらアメリカで音楽やってるよ」みたいなことになったら最高ですよね。
- それ最高ですね。行ったら行ったで何かあったかもしれないけど、「そんな計画性の無いこと言ってないで、もっと現実味を持った話をしろ!」って親に言われた理由がよく分かります(笑)。
そういう意味ではいまの状況に繋がる道を一緒に作った、FAITHのメンバーとの出会いは大きかったですね。
- そうですね。自分たちでも、ここまでメンバーが変わらずやれてるのが凄いなって思います。めっちゃケンカもするけど、解散もしないし、脱退もないし。
キャスナーくんとルカくんはバンド始める前というか、子供の頃から知っていたんですよね?
- はい。地元にハーフのコミュニティみたいなものがあって、レイ(キャスナー )とルカとは親同士も仲良くて、私も小さい頃から知ってて。小学校低学年まではよく会ってたんですけど、私がピアノとか歌とか、演劇とかやり始めてからはあまり会わなくなって。すごい久しぶりに会ったのが中3の時だったかな、確か。私が中学の先輩のバンドを観に行ったら、その先輩がレイのお兄ちゃんと一緒にバンドをやってて。その時レイとルカと久しぶりに会って、そのままファミレスに行って話してたら、バンドの話になったんですよね。レイが「俺、もう歌えないから歌ってよ」って言うから、「うん、やるやる」って。
ずいぶん軽いノリだなぁ(笑)。
- その後、レイからLINEが来て、「本当にやる?」って言うから、「やるやる」ってグループLINEに入れてもらって。そこに藤子が加わったのが2015年1月5日だから、もうすぐ丸5年になるんですね。凄いなぁ、そこらのカップルより長いですよ!(笑)。
あはは。Akariさんは小学校の時に合唱、中学で声楽をやっていて、歌の土台にはクラッシックがあるんですよね?
- はい。だから、バンドをやるまでロックは全然聴いてなくて。テイラー・スウィフトがずっと好きだったり、洋楽のポップスを聴いたり。あとママがCDを持ってた松田聖子を聴いてました。
歌以外には何か習い事をしてたんですか?
- 小学校の頃はキッズミュージカルをやってて、中学の頃も市民劇団みたいなところでお芝居をやっていて。仲良い友達もいっぱいいたし、そこから演劇の道に進んだ人もいたりして。昔から舞台に立つのが好きで、何かしら表現したかったんだと思います。
それが最後、バンドに行き着くっていうのも面白いですよね。
- バンドが一番長く続いてますからね。私一人のことじゃなくて、5人の意思があって成り立ってるというのが続いてる理由だと思うし、センターで歌ってて、ステージがすごく楽しいっていうのもあるし。ライブで色んなところに行けるのも楽しいし、繋がりがすごく増えるのも楽しいし、面白い人もたくさんいるし。バンドをやってると、他の習い事には無かった新鮮味が常にあって面白いんです。
ボーカリストということで、バンドのフロントマンとしての責任感やプレッシャーはないですか?
- 重要なポジションだと思うし、もちろん頑張らなきゃいけないと思ってます。カッコいいバンドとか見ると刺激受けますね。FAITHの場合はみんな前に出てくるタイプなんで、グイグイ出てきてくれるのは良いんだけど、その中でも私はそれ以上前に出なきゃいけないんだっていうプレッシャーはあります。MCもバンドの意志を私が言葉にして喋るみたいな感じがあるから、そこの責任感も。
FAITHのライブを観てると、Akariさんがバンドの芯を担っているからこそ周りがぐいぐい前に出れるところもあるし。メンバーは信頼があるから、伸び伸び出来るんだと思いますよ。曲に関してもヤジマくんは、「この曲にメロ付けるの難しいんじゃない?と思うのもぶつけると、最初は「出来ない」って言うけど、ちゃんと乗り越えてくれる」って話をしてくれたり。
- 私がですか? やったぁ! ヤジマも褒めることあるんだ(笑)。かと言って、「マジで無理!」ってことを投げられても困りますけど。そういう信頼があるのは、とても嬉しいです。
逆にバンドを始めた時は、中学の頃からバンドをやってた男子チームが頼もしかったでしょう?
- 頼もしいというか、単純に楽しかったし、新鮮でした。違う学校の人で集まってバンドをやるのも楽しかったし、学校終わりでライブハウスに通うのも楽しかったし。最初、あの3人がそんなに出来るヤツだと思ってなかったんです(笑)。弾けて普通だと思ってたんだけど、よくよく考えた時に「あれ、この人たち上手いのかもしれない」と思って、ちょっと尊敬出来るようになって。
Akariさんも歌やピアノを習ってましたしね。
- そう。だから、そういうものだと思ってたんですけど。「曲作ろうぜ」って言われた時も「そんな簡単に出来るの?」と思いつつ、私も普段ノートに書き留めていた言葉で歌詞を書いて、みんなで床に座ってギター弾きながら、普通に曲作りして。今考えると、何も知らないところから曲作って、天才なの?って思いますよね(笑)。藤子も高校からベース始めたけど、そんな3人にしっかり付いていってて。藤子は負けず嫌いだし頑張り屋さんだから、ずっと努力してるんです。
曲を作り続けていくうちに、歌詞の書き方も分かってきた?
- テイラー・スウィフトをずっと聴いてたから、最初は聴いてたものの真似から始まって、恋愛メインの歌詞になったりしてたんですけど。最近やっとFAITHらしさが歌詞にも曲にも出てきたかなと思います。
いま、AkariさんはFAITHにおいて、どんな立ち位置だと思う?
- 自分はバンドのリーダーではないなと思ってて。ボーカルという役割があるからリーダーは他の人に任せて、歌うことで全体を引っ張る存在になれればいいなと思ってます。ライブも曲も、メンバーに自然と付いてきてもらえるように、グイグイ引っ張っていければいいなって。
ライブではAkariさんへの信頼感があるから、みんなグイグイ前に出るし。音源ではボーカルを最大限に活かすために、押すばかりでなくて引くことも出来てるし。ちゃんとメンバーをリードするフロントマンになれてると思いますよ。
- そうだと良いなぁ。みんな、ちょっとだけ客観的に自分たちを見ることが出来るようになったのかな? と思います。東京に住むようになって、見る物や見え方が変わってきたなと思ってて。東京にいると、人も景色も見れば見るほど面白くて。
色んな人や景色を見ることで、自分のことも見えてくる?
- そうなんです。「人の振り見て我が振り直せ」じゃないですけど、色んな人がいるおかげで「私もこうなりたいな」と思ったり、逆もあったり。自分を客観的に見る力も育つのかなと思って。今まで以上に色んな人と知り合えて、「この人のこういう所、素敵だな」とか憧れられる人にもたくさん出会えてるし。あと、平日でも誰かしら好きな人がライブやってて、それを観て刺激を受けると歌詞を書きたくなるんです。だから、モチベーションも上げやすい環境だと思うし。毎日、新しいことを見つけて、新しいところに行って、新しい会話をしてってところから、もっと新しい歌詞が生まれてくればいいなと思ってて。
逆に地元への想いがより強くなって、「Yellow Road」みたいな曲や、昔書いた曲に込める気持ちは変わってくるだろうしね。
- そうですね。「Yellow Road」を書いた当時は、すごいホームシックだったんですけど。今は一人暮らしが超楽しいし、変わらず実家は大好きだし。地元に良いニュースを持って帰りたいって思いが出てきました。同じ曲でも歌に込める気持ちはだんだん変化していくのかも知れないですね。そうやって今後、ちょっとずつ変わってく自分からどんな新しい感情が生まれてくるのかは、すごく楽しみです。
最後にプレイヤーとしての目標を聞かせて下さい。
- 人に認められるよりも、自分に認められたいってことに最近気づいて。その上で誰かが私に憧れてくれたら嬉しいし、歌詞でもパフォーマンスでもなんでもいいんですけど、共感してくれる人が増えたらいいなと思っていて。カリスマになりたいです!(笑) でも、なりたいと思うってことは、まだなれてないってことなので。まずは自分自身が100%認められる自分になりたいです。
Interview by フジジュン
CLOSE